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概要:ネスレ日本は3月13日、スターバックスとコラボレーションした新製品を発表した。2018年に7900億円で結んだグローバルライセンス契約の「意図」が見えてきた。
ネスレが4月から販売を開始する「ネスカフェ ドルチェ グスト」スターバックス専用カプセル。
ネスレ日本は3月13日、スターバックスとコラボレーションした新製品を発表した。2018年8月にネスレがスターバックスと71.5億ドル(約7900億円)で結んだグローバルライセンス契約の後、初めて世に問う新製品。ネスレの大きな「買い物」の意図が見えてきた。
ネスカフェ&ネスプレッソに次ぐブランドに
スタバとのコラボで、若者の取り込みを狙うネスレ。
専用のカプセルを入れ、水の量を選び、ボタンを押すだけで、家でもスタバが楽しめる。発表されてみると、今までなんでなかったんだろう?と不思議に思うくらい、ストレートな商品だ。
「(スタバを)ライバルと思っていたかと言われると、勝手にそう思っていたかなとは思います」
ネスレ日本飲料事業本部長の深谷龍彦氏は、記者会見でそんなホンネをもらした。
ライバル関係にあったはずのネスレが、なぜスタバを頼ったのか?
記者会見によると、狙いのひとつは、若者層の取り込みだ。今までネスカフェやネスプレッソを購入していた主な顧客層は子育て層の30代から40代。スターバックスのブランド力を活かして、今後はミレニアル世代の新規ユーザーを獲得していくという。
もうひとつの狙いは、家庭外のコーヒー需要の取り込み。オフィスや大学、ホテルなどでスタバが飲める、専用のマシンを開発。4月からはスタバのコーヒーをオフィスで提供する事業を展開していく予定だ。
進むコーヒー業界の再編
コーヒー界で圧倒的な知名度を誇るネスレとスタバの、意外とも思える「ブレンド」。
しかし、世界のコーヒー市場に目を向けると、ネスレとスタバに限らず業界内の再編活発化が背景にあることが見えてくる。とくにここ数年は、大手コーヒーチェーンによる買収や、食品・飲料大手との統合が目立つのである。
日本経済新聞などの報道によると、2015年には、コーヒーの売上高でネスレに次ぐ業界2位を占めていた米食品大手のモンデリーズ・インターナショナルと、同3位だったオランダのコーヒー・紅茶大手のDEマスター・ブレンダーズ1753がそれぞれのコーヒー事業を統合。業界1位のネスレを追っている。
また、ネスレは2017年に米クラフトコーヒーチェーンのブルーボトルコーヒーを買収。さらに2018年には、米飲料大手のコカ・コーラが、イギリスのコーヒーチェーン大手コスタ・コーヒーを51億ドル(約5700億円)で買収している。
関連記事:どこが良いのか分からない、米コカ・コーラが51億ドルで買収する「コスタ・コーヒー」
「おうちスタバ」は浸透するか?
スタバは雰囲気を楽しむために行くもの?(写真は中目黒にある高級店「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」)
そんな中で投入された今回のスタバとネスレの新製品。「ネスカフェ ドルチェ グスト」を使って飲めるスタバやオフィスで飲めるスタバも気になるが、何気にインパクトが大きいと感じたのが、2019年秋以降から始まる、スタバのドリップコーヒーや豆の小売店舗での販売だ。
というのも、今回の新製品を実際に飲んでみた筆者の率直な感想としては、「おいしいけれど、言われなければスタバだとはわからない」味。どんな商品にもそういう面があるのは承知だが、いずれにしてもネスレの「ネスカフェ」も高級コーヒー路線であることには変わりないので、結果的に食い合ってしまうのでは……という懸念は消えない。
筆者が取材してきた感覚では、スタバには店舗の雰囲気を楽しんだり、作業スペースとして活用したりという需要が多いように思う。そうした実情を踏まえると、スタバのカプセルがあるから「ネスカフェ」のマシンを買う、というニーズはそう大きくないのではないか。
一方で、スーパーなどで買えるスタバのドリップコーヒーは手が出しやすい。ちょっとした贅沢を感じたいシーンでも使えそうだ。
さらに「オフィスで飲めるスタバ」の拡大も気になるところだ。3月13日の記者会見では、ネスレが培ってきた45万以上のオフィスのネットワークを活かしていくとの説明があったが、今後スタバブランドはどれだけ広まるのだろうか。
ネスレが新たに仕掛ける「おうちスタバ」と「オフィススタバ」。圧倒的な知名度とブランド力を活かし、追随する競合他社の撃墜を狙う。
(文・写真、西山里緒)
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