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概要:1億円以上の報酬を得ている役員の数は、過去最多になった。だが、その内訳を明らかにしている企業は少ない。
上場企業で1億円以上の役員報酬を受け取った人は731人だった(2018年決算、東京商工リサーチ調査)。2010年に開示が義務づけられて以来、人数、社数(360社)ともに過去最多。
「1億超え役員」最多は三菱電機
絶好調な業績を反映し、年収1億円以上の役員がもっとも多い企業となった三菱電機。
REUTERS/Toru Hanai
最高額はソニーの平井一夫会長の27億1300万円。
1億円以上受け取っていた役員の数が最も多い企業は三菱電機の22人だ。前年も同じく22人で同社は5年連続でトップとなっている。1億円以上を受け取った同社の執行役22人の役員報酬総額は32億9500万円で、前年比7億1200万円増となっている。
ちなみに三菱電機の2019年の春闘での賃上げ額は、2018年より500円減の1000円。年間1万2000円だが、執行役1人当たりのアップ額は3200万円になる。単純比較はできないが、社員と役員の格差にあらためて驚いてしまう。
三菱電機の純利益(2018年3月期決算)は2718億円。売り上げ、利益ともに過去最高を更新。役員と同様にもう少し社員に還元してもよいと思うのだが。
“お手盛り”で決められていた役員報酬
高額批判を避けて、退任後に報酬の一部を受け取る契約を結んでいたとされるゴーン被告。
Keith Tsuji/Getty Images
役員報酬といえば、有価証券報告書の虚偽記載(過少記載)で東京地検に逮捕されたカルロス・ゴーン日産自動車元会長が大きな話題になった。
ゴーン被告の2010年度から2017年度までに開示された毎年の報酬額は平均約10億円だったが、実際はその倍の20億円だったとされる。“隠された”10億円は、高額批判を避けて退任後に受け取る契約書を日産と交わしていたという。逮捕容疑にもなっている2017年度までの隠した報酬は計91億円にのぼる。
だが、問題は隠した金額の多さだけではない。隠蔽工作の引き金になった、報酬開示を義務づける2009年の改正内閣府令は、1億円以上の個別開示とは別に、報酬額を決定する方針や算定方法などの開示も求めていた。
しかし、日産の有価証券報告書(2018年3月期)には「代表取締役と協議の上、決定する」とあるだけ。代表取締役はゴーン被告と同じく逮捕されたグレッグ・ケリー被告と西川廣人現CEOの3人だけだ。実質的にゴーン被告に一任されていたとされ、まさに“お手盛り”で決められていた。
公開できない役員報酬の設計
社員の給与に比べ、役員報酬の内訳は“ブラックボックス”となっている企業は少なくない。
shutterstock/ppart
実は経営者の一存で役員報酬を決めているのは日産に限らない。昔から役員報酬は社長に一任され、いったいどのような方法で決めて、金額はいくらなのか、誰にもわからずブラックボックス化していた。
以前、大手サービス業の人事担当役員に設計段階の役員報酬制度の中身を見せてもらったことがある。各部門の業績目標の達成率と全社の業績を加味した計算式であった。これは開示するのかと役員に聞くと、こう言われた。
「制度の設計書でも役員の異論が相次ぐほどの騒ぎになりました。仮に決定してもとても公開することはできません。また、役員の報酬は一般的に秘書室や役員室、つまり経営トップが仕切っており、人事部の管轄外なのです」
つまり、自社の社員にも役員報酬の算定式はもちろん報酬額も知らされないということだ。
これに対して社員の給与はどうだろうか。一般的に社員の給与は業績評価と行動評価の2つがあり、業績評価は、社員が期初に設定した目標の達成度をランク付けし、月給や賞与に反映される。
例えば、達成度100%であれば昇給額が2万円になり、賞与は20%増しになり、「基本給×4カ月×120%」という具合に一定の計算式に基づいて賞与の金額が決まる。多くの企業では透明・公正な給与の決め方に腐心している。
当然、算定方法は社員にも公開され、我々取材側にも快く説明に応じてくれる企業も少なくない。
高まる投資家からの開示圧力
最近は投資家からの開示圧力も強まっている。
shutterstock/hxdbzxy
しかし、役員報酬は別格だ。取材を申し込んでも応じてくれる企業は極めて少ない。自社の社員に対しては「成果主義」を導入し、厳しく査定しながら、自分たちはいったいどうやって決めているかも明かさないのは筋が通らないだろう。
どういう指標(売上高、利益、株価など)に基づいて、どの程度達成したらいくらになるのかという報酬の算定方式がわかれば、たとえ高額の報酬であっても、適正な報酬を受け取っているのかどうかを検証できる。
だが、最近は投資家の圧力で算定方式の開示の圧力が高まっている。投資家にとっては経営者が何を重視して経営しているかという重要な情報でもある。つまり、経営者自身がどんな目標を設定し、どれだけ達成したのかを知る指標になる。その結果として報酬額が下がれば、経営者としての手腕が問われることになるからだ。
2018年の6月1日、東京証券取引所は、「コーポレートガバナンス・コード」を改定し、役員報酬のあり方についてこう追加した。
「取締役会は、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続きに従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべきである。その際、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである」
これを受けて上場企業はいやが上にも算定基準を明らかにしなければならなくなった。2019年3月期決算の企業は、まだ有価証券報告書は提出していないところが多いが、2018年12月期決算の企業はすでに提出している。
二極化進む開示状況
役員報酬の内訳開示に当たっては、企業間でその姿勢に格差が出ている。
REUTERS/Kim Kyung-Hoon
例えば、キリンホールディングスで1億円以上受け取っているのは、磯崎功典社長と西村慶介副社長の2人。役員報酬は基本報酬(固定報酬)と業績連動報酬(賞与・株式報酬)に分かれる。そのうち役員の賞与は「連結業績指標(連結事業利益)」と「個人業績評価指標」によって決まる。そして支給額は「目標達成時を100%とし、0~200%の範囲で決まる」としている。
簡単に言えば会社が目標としている連結事業利益を100%達成すれば、規定の金額が支給され、下回れば下がり、上回れば多くもらえるということだ。個人業績も同様に上司の役員と交わした目標を100%達成すれば、規定の金額をもらえる。その2つの合計が賞与の額になる。
ちなみにキリンの場合、社長は連結業績指標だけで金額が決まる。ただし、計算の元になる「賞与基準額」は役職ごとに決められていて、その額は明かされていない。また、役員ごとの会社業績と個人業績のウエイト(比率)も明かされてない。
ただし「業績連動報酬の報酬総額に占める比率は原則として、業績目標達成時の概ね50%程度となる」と記述がある。西村副社長の固定報酬は5600万円、業績連動報酬は6300万円(賞与と株式報酬)。業績連動報酬がやや上回っているということは、個人業績目標を達成したのではないかと推測できる。
賞与基準額などもう少し開示してもらいたいところだが、それでもキリンは従来と比べて開示度合いが高いといえるだろう。
同じ2018年12月決算の有価証券報告書で、キヤノンの御手洗冨士夫会長兼CEOは3億7200万円の報酬を得ている。だが、算定基準について触れてはいない。役員報酬の決定方法についてはこう記載しているだけだ。
「取締役の個別の報酬額は、『指名・報酬委員会』の検証を得た報酬制度に基づき、取締役会決議により決定されます」
キリンと比べて見劣りするどころか、何も記載していないに等しい。キヤノン以外にも算定基準を開示していない企業も少なくない。
役員が高い報酬をもらっても、本人の努力や成果で得たものとわかれば社員も納得する。それもわからないまま常に「成果を出せ」と尻を叩かれ、働いている社員はたまったものではないだろう。
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溝上憲文:人事ジャーナリスト。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て独立。人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマに執筆。『非情の常時リストラ』で2013年度日本労働ペンクラブ賞受賞。主な著書に『隣りの成果主義』『超・学歴社会』『「いらない社員」はこう決まる』『マタニティハラスメント』『人事部はここを見ている!』『人事評価の裏ルール』など。
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