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概要:シンガポールのインターナショナルスクールに通う娘の担任の先生から、現時点での娘の能力について説明を受け、いくつもの感動があった。
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シンガポールのインターナショナルスクール「UWC South East Asia」に通う娘の担任の先生から、娘の現時点でのアカデミックな能力について説明を受けた。
同校が6歳の時点で重視しているのは「数学」と「読解力」。数学については「単純な計算能力」は評価されず、「概念的な数学的理解力」が評価対象となる。読解力については、子どもたちの能力を先生がレベル分けし、それに応じた本を読書課題として渡している。
「自分のアルゴリズム作成」を重視する数学教育
娘の通うインターナショナルスクールでは、早く確実に計算結果を出す能力ではなく、計算のプロセスでのアルゴリズム(計算方法)づくりが評価される。
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まず数学について、娘のノートを見て感銘を受けた。6歳に対して学校から与えられる数学の課題は「証明問題」ばかりなのだ。
例えば、「23と32が同じでないことを、いくつかの方法で証明せよ」。
娘は4通りの方法で証明していたが、どれも面白かった。証明以外の計算問題についても、早く確実に計算結果を出す能力ではなく、そのプロセスでのアルゴリズム(計算方法)づくりが評価される。例えば、2桁の足し算をする時は、数字をどう分解して計算を組み立て直すかが問われる。
また、6歳の読解力については、「読んでいる内容を自分に関連付けられる直前」の段階とされている。その段階に応じた本を読まないと、能力を育てていくうえで危険なものもあるということだ。
こういう教育を子どもたち一人ひとりにテーラーメイドで行い、評価と確認を辛抱強く繰り返し、なおかつ子どもと親にきちんと説明できる先生の能力、取り組みへの姿勢に、ひどく感激した。
マジョリティのいないクラスには「外人」もいない
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課外活動で娘たちが遊んでいる様子にも感心させられる。
娘のクラスは22人で、子どもたちが持つパスポートの数は22より多い。いろんな肌や髪の色、文化的・宗教的に多様な背景を持った子どもたちが集まる。全校には4歳から18歳までいるので、校庭では年齢を飛び越えた出会いがある。子どもたちはそこでぶつかり合い、遊びの主導権争いをし、折り合いをつけようと話し合う。
マジョリティのいない娘の学校には、「外人」という言葉は存在しない。こういう(多様な人間が共存する)空間に慣れておくのは、早ければ早いほどいい。
日本の教育の現場はどうだろうか? 近年はイニシアティブも生まれ、変化が始まっているように感じる。娘は春休みに日本の小学校に体験入学するのをとても楽しみにしている。深刻化する人口減少も背景にあってか、ありがたいことに日本の小学校は娘のような子どもを大歓迎してくれる。日本の教育の最新状況については、娘の体験を通じてそのうちアップデートしてみたい。
これからはTOEFL満点が最低レベルになる
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多様な人間の共存という文脈で、英語にも触れておきたい。
筆者が東南アジアをベースに生活や仕事をするようになって確信したのは、英語の完璧な読み・書き・聞き取り能力は(Google翻訳の精度がどこまで高まっても)これから世界で成功するための最低条件であるということだ。ビジネスの最前線で活躍する若い世代は、母国語が何であれ、完璧な英語運用能力を持っている。日本で「英語ができるレベル」では残念ながら厳しい。TOEFL(国際基準の英語能力測定試験)で満点が最低レベルだろう。
ネイティブレベルの英語が成功の最低条件と聞いてドン引きした方もいるかもしれない。しかし、英語はコミュニケーションツールと割り切れば、苦手意識は減り、上達は早くなる。心配には及ばない。
ビジネスの最前線で活躍する若い世代は、母国語が何であれ、完璧な英語運用能力を持っている。
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最近の娘は、家庭内でも英語が強く出て一苦労だ。ネイティブ並みに早口で、しかもちょっと幼児言葉なのでわからないことが多々ある。我々が習ってきた受験英語と、コミュニケーションツールとしての英語はけっこう違う。
筆者は学校でやらされる受験英語が本当に苦手だった。古くさくて面白くない英文ばかり読まされ、引っかけ問題のような文法テストが繰り返され、早くに英語への関心を失ってしまった。高校時代までは、合格者選別のツールとしての英語教育しか知らなかった。
だから、大学時代の夏休みにスイスにホームステイした時、受け入れてくれた家族の皆さんが英語はもちろん、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語まで食卓で披露してくれ、英語すら満足にできない自分に嫌気が差し、ひどく落ち込んだことを鮮明に覚えている。
そこの家族のお父さんが、「日本経済はいまは強大だが、君の世代(が経済の中心を担うころ)、英語が話せないと大変なことになるよ」と親身になって厳しいアドバイスをくれたおかげで、そこから一念発起して頑張った。
英語は「一番イージー」な言語
漢字は日本語の読み書きをマスターする上では大きなハードルだ。
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そんなわけで、ペラペラ・ネイティブの娘がうらやましい。ところが、そんな娘のほうは「日本語がちゃんとしゃべれるようになりたい」と涙ぐむこともある。娘が言うには「英語はイージーなんだよ。クラスのみんなが話せるんだから。字(アルファベット)も一つしかない」。でも「ジャパニーズは漢字が読めないからわからないんだよ(涙)」と。
学校でも日本語の補修を受け、その宿題はやけに頑張っている。日本の外で暮らす娘は、日本が母国であることを誇りに思っているようだ。娘の気持ちもわかる。クラスメイト全員の親が熱烈な日本ファンで、なかには休みがあるたび日本に旅行する猛者もたくさんいる。友だちのお父さんやお母さんから絶賛される母国なのだ。
娘はとくに、「は」「が」「を」「に」といった助詞を自然に使い分けられる我々がうらやましいようだ。確かに我々は自然にそれを使い分けられるが、どういうシチュエーションでそれらを使い分けるのか、論理的に説明するのはけっこう難しい。そういう意味では、娘には申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが。
英語が嫌いになるような受験教育を受け、英語に苦手意識を持つ我々日本人だが、娘の言うようにそもそも簡単な言語だからこそ世界で使われている面もあり、能力が足りないなどと心配する必要はない。皆さんもお子さんと一緒に頑張りましょう。
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田村耕太郎(たむら・こうたろう):国立シンガポール大学リー・クワンユー公共政策大学院兼任教授。ミルケン研究所シニアフェロー、インフォテリア(東証上場)取締役、データラマ社日本法人会長。日、米、シンガポール、インド、香港等の企業アドバイザーを務める。データ分析系を中心にシリコンバレーでエンジェル投資、中国のユニコーンベンチャーにも投資。元参議院議員。イェール大学大学院卒業。
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